ぢるぢるだいありーずおぶざでっど

女性向け風俗キャスト兼売り専ボーイのブログ

性風俗が「本質的に不健全」とは何ぞや

ニュース等々で知ってる人も多いかも知れませんが、性風俗事業者はコロナ禍での給付金(持続化給付金とか)の一部で不給付対象になってるんですね。そこで、とあるデリヘル事業者が「それはおかしいでしょ」ってことで国を相手取って不給付取り消しを求める訴訟を起こしてるんです。ちなみに裁判の概要や資料は下記リンクから確認できます。

「セックスワークにも給付金を」訴訟 |公共訴訟のCALL4(コールフォー)

そんで裁判資料を読んでいて気になったのが、被告(国)側は訴状に対する答弁書の中で「・・・性風俗関連特殊営業(異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業のこと、括弧内は補足)は,性を売り物にする本質的に不健全な営業とされ,・・・(答弁書21頁より引用)」って書いてるんです。つまり、被告側のロジックとしては、「性風俗特殊営業は『本質的に不健全』なので、補助金の不給付に該当させることは合理的な区別であり、何ら不当な差別には当たらない」ってことだと思います。たぶん。

実際にこのまま不給付になるのかどうかは今後の裁判所の判断にも左右されるだろうから分らんけど、「本質的に不健全」ってどういう意味なのか知らんと思って、頭を捻っています。先ずは普通に辞書的な意味から考えてみましょう。

本質的→物事の根本的な性質にかかわるさま

不健全→心身がすこやかでないこと。事物の状態などがゆがんでいること。(共にWeblio辞書から引用)

だそうです。それを踏まえて捕捉しつつ無理やりつなげると、「日本国(この件では経産省)的には、異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業は、根本的な性質がすこやかでなく、その状態はゆがんでいると判断している」って意味になります。なるほど。これはどこか普遍的な原理の皮を被った感想っぽい印象を受けます。

もちろん、何かに対して感想を抱くことは至極自然なことだし、俺も毎日何かに対して感想は抱いてます。「ラーメン二郎を全マシして、それを完飲完食するのは本質的に不健全な行為だよなぁ」とか。ただ、それを普遍的な原理(全マシした二郎は完飲完食するな)にまで昇華させる手段って恐らく今の日本には構造的に存在しない気がします。

例えば、イスラム教のコーランには「豚の肉食うな」って書いてあるけど、「豚の肉を食べてはいけない理由」を(神無しに)論理的には説明出来ないじゃないですか。それは単純に「神様がそう言ってるから」であって、そこに疑問を挟む余地は無い訳です。一神教が根強い地域とか、超強権的な王が国を支配していた時代であれば、物事の健全/不健全の基準は神や王みたいな、ある種の超越した存在を担保にすることで十分に通用するけど、今の日本には国民総意の神とかある種の大きな物語なんてのは無い訳で、健全/不健全を公に判断する為の根本が抜け落ちてるんじゃないかと。

そんな状態で、「〇〇は不健全だからダメ」みたいな事をさも普遍的な原理のように主張しようとすると、その不健全性を証明するための根本となる何かには、非常に空虚な事物を持ってこないと成立しなくなっちゃいます。その結果として、「その主張は論理的には正しいけど、そもそも普遍的な原理かどうかは判断できないよね」みたいな宙ぶらりん状態に陥っちゃいます。

そんで、それを補助金の給付/不給付要件の根拠にしちゃうと、最終的に水掛け論になるじゃないですか。なので最悪、不給付にするならするで、「不健全」とか「社会通念」とか「国民の理解」とかじゃなく、膝を打つような別の理由で不給付にして欲しいなぁとか思ってます。「いやァ、そんな理由でダメだったらそりゃァしょうがない。これは一本取られましたな。ガハハハ!」みたいな。俺は全く思いつかないけど。

簡単にまとめると、現在の日本では、普遍的なレベルで「本質的に不健全」って状態を証明するのは構造的に凡そ不可能だろうし、それを根拠に給付/不給付の判断をするのは悪手なんじゃないかと思ってます。

それと、今回の訴訟の原告側は同業者という事もあって、密かに応援してます。そして訴訟が良い結果で終わることを祈ってます。